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ロンドンで働いてみた

Cambridge MBAを2010年夏に終了後、そのままロンドンで仕事してみています。 ここでの体験を日本で役立てられるよう、日々勉強しています。
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04.26.23:51

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  • 04/26/23:51

01.04.10:25

テスト勉強からの現実逃避、会計編

1学期の授業のテストが間近に迫っているのでやっと準備を開始。今回はCorporate Finance、Accountingに加え、Organizational Behaviorという組織論的な授業の3本のテスト。
 
Accountingの授業は、正直なところ、1学期の中では最もレクチャーのクオリティに不満が残った。時間が少ない1年制MBAなので、教科書ざっくり斜め読みになるのはしょうがないのだが、なんだか通り一遍の説明が多く、いいオッサンが50人も集まって考えさせられるような内容ではなかったように思う。
 
例えば暖簾の説明にしても、「本当にgood investmentだったらその価値は続くわけだし、減価償却はしなくていいよね」「制度でもそうなってるから」的な説明で、なんだかなあと思っていた。
 
本来、暖簾を償却資産とするかどうかなんてのは歴史上、各国で大いに対応が違っていて、会社に対する考え方を議論する恰好の材料(個人的には暖簾は償却資産とする方が納得できるなあと思ってきたが、ポイントは他の方のブログ、例えばこれ http://masaru320.mo-blog.jp/business/2009/01/post_7dc8.html 等を。)だと思うのだが。。
 
といいつつ、こういうことをさくっと英語で指摘できずに、流れゆく授業を眺めながら一人でウニウニしていたのも事実で、今学期のオレは違うぜと自分に言い聞かせているところ。
 
そういえば授業も終わった12月初旬には、日本で来期、2010年3月期からIFRS任意適用が認められることが正式に公布されている。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091212AT2C1101W11122009.html

IFRSに一本化していく流れの中で、暖簾の償却はそのうち「ありえない」ことになっていくのだろうが、制度がこうだから当然こうなの、というような考え方には陥らないように気をつけたいと思う。
 
 
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誤解
2010年01月10日日

Tetsuさん、

専門家の立場から誤解が起きないよう一応コメントします。本トピックはかなり深い(重い)ネタなのでやや長いコメントです。

結論から言うと、上記のブログの著者(というか関連する他の多くのブログ作成者)は米国会計基準FAS141号及び142号(あわせて300ページ近い基準書)をあまり理解していないと言わざるを得ません。。

まず、US会計基準(または国際会計基準)では厳密に言うと、「のれん(Goodwill)」はこの著者達が指している「超過収益力」と全くのイコールではありません。つまり、欧米諸国の会計基準委員会が定義しているGoodwillは、買収対価と被買収企業の時価純資産の差額にあたるいわば「広義の」のれんではなく、この差額分を認識可能な無形資産(顧客関係・リスト、受注残、技術、パテント、法的に有利な契約関係など)に分解した後の「残余価額」をのれんと定義しているのです(かなりマニアックな内容なので昨年の会計学の授業ではリチャードはやってないです)。つまり、誤解を恐れずに言えば、なにかよくわかんない見えないassetに期待をこめて払った金額分を彼らはGoodwillと呼び、これこそが買収の目的であるシナジー効果の源泉だと考えているのです。シナジー効果がどのように生成されるのかというhowの部分は会計の領域でなく、むしろMBAで学習する戦略論や微妙なOB、HRMの守備範囲になるのでしょう(マイケル・ポーターの理論とか)。短絡的に考えればブランドや人的資産が相互作用しながら買収後の企業価値を高めていくことは、ブログの著者が言うように「想像」はできますが、これらの客観的なバリュエーションは無理なので会計実務上のれんで捉えているだけの話です。よって、のれんは当然、償却などできるわけはなく、しかも償却期間なんてどうやって決めるんだお前ら、みたいな話になります。このわけのわからないのれんをブランドだけで捉えて議論を先走らせる人がいるため、注意が必要ですね。

米国基準でも自己創設無形資産(internally generated intangibles)はオフバランスとなっており、買収によってでしか通常はオンバランスされません。
また、著者は恐らく英語の意味を勘違いしていて、indefiniteを「永遠な」というイメージで捉えているようですが、これは全くの誤解です。前職でお客さんがしばしばこの点を勘違いされていたのでその都度説明していたのですが、FAS141号、IAS3号におけるindefiniteの正確な意味は「不定の、不明確な」の意味です。だから減損テストをわれわれのようなファームがクライアントに嫌われながらも毎年やって、減損の兆候をモニタリングするのです。

最後にこれらのブログに共通して見落とされている重要な点があります。それは、ゴーイング・コンサーンの視点です。これは正しいとか間違っているとかそういう問題ではなく、ファイナンスにおいても大前提の命題であり、会計論にファイナンス理論の割引現在価値のコンセプトが組み込まれてきた欧米の考え方の特長を示しているとも言えます。ゴーイング・コンサーンの観点からは、Goodwill(=狭義ののれん)を20年という謎の償却期間で減価していくというのは彼らからすればあり得ない話になってくるのです(恣意性が入りまくる)。日本基準が主張する収益・費用のマッチング原則は確かに一理ありますが、のれんのような特殊無形資産を他の有形固定資産と同様のロジックで減価させるのはgroundlessだといわざるを得ないというのが欧米の見解でしょう。CFAとしての自分の立場からしても、競争の激化等に起因するのれんの償却方法自体はやはりロジックが弱く、それをビジネスプラン上のP/Lで捉える時は、expenseではなくrevenueの減少で捉えるのがより説明がつくのではないかと思います。(ちなみに私は反マイケル・ポーター論者です)


ベインアンドカンパニーによればM&Aという経済行為は9割が「失敗」(=会社を高く買いすぎる)そうです。理由はいくつかあると思いますが、投資銀行業務におけるM&Aアドバイザーの報酬体系(=取引価格を最大限にするインセンティブを持つ)がもたらす弊害が大きいように思います。もしこれが実態を表しているなら、これは経済社会にとって極めて無駄で大きな機会損失を払っていることになります。他に投資すべきもの(R&DとかHR投資とか)はたくさんあるはずで、カネを出すならきちんと何に払ったのか説明しろと主張するステークホルダーへの説明責任としてのれんのaccountingは重要です。



Re:誤解
2010年01月11日月

おおおっさすが。詳しい解説ありがとうございます。
なんと、僕も全く分かってませんでしたね。正直、intangible assetに分類されているものとgoodwillとの違いが分かってなかったように思います。そうすると確かに償却できるわけないというロジックは理解できますね。

逆に減損に関してもう少し伺いたいのですが、そうすると、会計ファームとして「これは減損すべきだろう」という最終的な判断は、何に基づいて行われるのでしょうか?恣意性が極力入らないようにするには何を基準にすればいいのでしょうか?

あともう一つ、単純に意味が理解できない部分があったのですが、「expenseではなくrevenueの減少で捉えるのがより説明がつくのでは」とは実務的にはどういう意味なんでしょうか?

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