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ロンドンで働いてみた

Cambridge MBAを2010年夏に終了後、そのままロンドンで仕事してみています。 ここでの体験を日本で役立てられるよう、日々勉強しています。
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03.29.02:10

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  • 03/29/02:10

04.09.09:14

新エネ、疑問、決意

いまやenvironment、clean tech、renewable energyはMBA用語の中でも最もよく
使われる部類の言葉であり、入学以来、これでもかという勢いで聞かされてきた。
 
学校でも関連のセミナーはじゃんじゃん開かれるし、"Climate leadership"なんて
授業まである。ケンブリッジMBAで今年から始まったconcentrationという専攻制度
の選択肢にも、"Finance"、"Entrepreneurship"等の定番と並んで、わざわざ
"Energy & Environment"が入っていたりと、学校側もこの分野には非常に意欲的
である。
 
もちろん学校以外でも、ここはヨーロッパ、その手の話題は尽きない。また、アメリカ
のMBAに行っている知り合いから聞いても、向こうでもエネルギー分野の位置づけ
はやはりかなり高いようだ。
 
俺の場合、学校でもEnergy SIG (Special Interest Group)という同級生の勉強会に
所属してて、また、今はGlobal Consulting Projectで環境関連のプロジェクトを
やってることもあり、同級生でも新エネ関連のキャリアに進みたいという人間の話を
よく聞く。彼ら同級生はなんとかそっちの仕事をつかむべく、セミナーにも積極的に
参加するし、人脈作り(こっちでは"networking"と呼ばれる)にも熱心だ。

これらは全て、大いに結構だし、俺も非常に興味のある分野なので、出来る限り
協力、貢献したいと思っている。
 
 
 
ただ、正直ひっかかるのは、
(1) まず第一に「なんでそんなに新エネルギーが好きなんだろう、既存エネルギーに
      は興味持ってくれないの?」ということと、
 
(2) 第二に、「お前ら本気でエネルギーに命かける気あるか?」
ということである。
 
 
(1)の点から言うと、MBAでそれなりにお勉強もできて、これから社会的にも相対的に
有利な立場に立てるであろう人間たちが、こぞって新エネ、というのは、まあいいんだ
けど、なんかもったいない。
 
話を聞いてると、「石油石炭はもう成熟産業、よりチャレンジするには新エネ」みたいな
ことを言われてしまうのだが、化石燃料は決して安定していない。むしろ超不安定、
課題山盛り。頭のいい人になんとかしてもらいたいことは沢山ある。中でも、これから
先、産油国のえらいさんとどう付き合うか、という問題は、弁の立つMBAが前線で頑張
れる分野だと思う。
 
ついでに言うと、先進国での雇用の意味では、新エネルギーは多分これから荒れる。

特に技術によっては、そもそも大したテクノロジーではなかったりして、陳腐化が
かなり早い。そのわりに、エネルギー供給の観点で安定的ではない、すなわち人間
生活の中での主要なパイを狙っていけない(例えば、太陽光が石炭火力に代わって
電源のベースロードになるのは無理)ものが多く、よってもって本質的に商売が拡大
しない。急激に人が入りすぎた業界では、これから廃業、統廃合、人切りが避けられ
ないだろう。
 
また、新エネ関連のエンジニアではなくビジネスサイド、例えばPEとかベンチャー
キャピタルみたいなのもあるが、このへんの将来性も怪しい。そもそも、この手の
ファイナンス屋さんは足が早く、かつ資本コストもお高くつく方たちなので、政府が
支援してやっと青息吐息、でもプロジェクトは20年走らなきゃいけない、みたいな
業界でどうやって生き残るつもりなのか謎。ケンブリッジにもこういうPEはいくつか
あるが、個人的にはかなりネガティブ。
 
 
さらに根源的に思うのは(2)の方なのだが、MBAで新エネとか環境やりたいという人達
の多くから、なんというか、覚悟が見えない。どうにも、なんか「ここを足掛かりに別の
分野へ転身」ということを考えてそうな気がするのだが、その意味では、ひとつのプロ
ジェクトの足が長いエネルギー分野は、多分典型的なMBAのキャリアとマッチしない。
 
まあ何が典型的なMBAか、というと、元々は投資銀行コンサル、もうちょっと最近だと
PE、ヘッジファンド、ベンチャーキャピタルあたりがポストMBAの仕事として最高だった
わけで、これらが相対化してきている今、MBAのキャリア感も変わってきていると言え
なくもない。

学校側も、過去の典型的な職場に学生をリードできないから, 新エネ的なものに流れて
いるのかもしれない。
 
とは言え、短期的な成功イメージを持っているとしたら痛い目に会うと思われるのが
この業界である。2,3年以内に履歴書に書けることはけっこう少ないだろう。どうもこの
へんの認識が薄い同級生が多い気がして、やや心配。
 
多分この分野を攻めるには、一生をかける覚悟が必要。例えば欧米的キャリアでも
最高位のひとつに位置する石油メジャーのCEO、役員レベルは、全て生え抜き社員。
多くの会社にいる、元コンサルです的な役員は皆無。しかもその内けっこうな割合が、
もともとエンジニアで現場感もバリバリだけど、ビジネスもみっちり叩きこんできた、
というタイプ。新エネは違う、なんてことはなくて、そもそもこういう人達と伍していか
なきゃいけないんだから、移り気でいいはずがない。
 
そしてそんな石油メジャーですら、これから生き残っていけるのかが分からないのが
化石燃料ワールドである。いまやエクソン、シェル、bp等に代表される国際石油会社
は、束になっても世界の石油の15%しか押さえていない。あとは地元のおじさん達、
産油国ががっちりガード。地元のおじさん達に価値を提供し続けられなければ、
さようならと切られてしまう世界だ。

ここでいう、提供できる価値がもしかしたら新エネなのかもしれない。このへんの新エネ
と産油国の関係はまた詳しく考えたいが、俺にとっては新エネは(少なくとも今出てる
ものは全て)その程度の位置づけ。
 
 
と、同級生の文句ばかり言ってきたが、俺はこの分野に命をかけられると思っている。
自分の能力を考えると、新エネで世界を変えることは無理だろうが、今の世界と今の生活
を守ることはできるはず。できる、というかなんとかする予定。
 
自分が死ぬのは多分2065年くらい。2064年までは働くつもり。それでもあと2万日弱。
それまでに何をなすべきか、考えさせてくれているという意味では、残り少ない学生生活
と同級生との会話に、本当に感謝しなければならないと思う。

 
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