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ロンドンで働いてみた

Cambridge MBAを2010年夏に終了後、そのままロンドンで仕事してみています。 ここでの体験を日本で役立てられるよう、日々勉強しています。
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09.20.01:57

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  • 09/20/01:57

04.14.08:17

よりマニアックな二酸化炭素と私

Global Consulting Projectも終盤を迎え、今までの調査や作った経済性モデルの総
仕上げをしている。今日はかなりマニアックな内容になるが、今後の新エネルギーとか
を考える上では重要な点なのでおさらい。
 
 
 
今回作った経済性モデルは、将来の二酸化炭素排出規制によって企業にどの程度の
コストインパクトがあるか、というもの。ここでコスト計算に一番きいてくるのは、当然ながら、
二酸化炭素排出権の価格が将来いくらくらいになっているかという点。価格が安ければ、
例え排出削減などできなくても権利を買ってくればいいじゃんだし、高ければ、外で買え
ないかもしれないから一生懸命(投資もして)排出削減しなきゃというロジックになる。
 
 
実はいま取引されている排出権にも色々あって、上場してマーケットで取引されてるもの
だけでも
 
(1) 国際的枠組みによるもの  と
(2) 国内の枠組み、もしくは企業間の自主規制によるもの
 
とがあり、(1)の代表格は①京都議定書がベースになっている「CER」、②欧州連合域内
排出量取引制度
(略称:EU-ETS)がベースになってる「EUA」であり、(2)の代表格は(いま
だ国際的枠組みには入っていない)アメリカ、シカゴで取引されている「CFI」「RGGI」など。
 
アメリカは京都議定書に入ってないから何にもしてないかというとそんなことはなくて、
州レベルの規制は進んでいて(ただし全くやってない州もある)、そういう州では(1)の国際
的枠組みと同じくキャップアンドトレード(排出削減をして余った分の権利は売っていいです
よという仕組み)をベースにした取引が(2)でなされている。 
 
で、今までの価格トレンドを見ると、例えば国際的枠組みであるEU-ETSをベースにした
EUAでも、2005年の取引開始以来、2006年と2008年に34ユーロ/トンをヒットして以降は
下がり続け(画像。見づらいですが。。)、直近では13ユーロ/トン近辺。

9d5f0bab.jpg






(2)だと状況はもっと寒く、過去に10ドル/トン以上になったことはほぼ無い。

(2)の中で個人的に注目している銘柄で、「アメリカの連邦レベル規制が成立した暁には、
その時に使える排出権を渡す(よって規制が成立するかどうかのニュースに敏感に反応
する)」という商品(CFI-US)もあるが、これとて直近価格は8ドル/トン。


 
排出権価格がいまいち盛り上がらない理由は色々あるのだが、直近ではやはり、景気が悪く
なってエネルギー消費量が自然に減り、頑張らなくても二酸化炭素排出が減ってしまった、
ということ。例えばEUの排出削減目標は2020年までに1990年比でマイナス20%なのだが、
今の段階で(ほとんど努力せずに)既にマイナス10%達成できてしまったという。よって排出
権は完全に余っている。しかも余剰の排出権はとっておけばあとで使えるので、将来の価格
をも押し下げる。 
 
 
 
で、こういう状況で二酸化炭素価格をいくらで見積もりましょうか、という話になるのだが、
当然ながら我々としてはある程度低めに見ざるを得ない。まあたしかに超長期で見れば何が
起きるか分からんが、多少違うシナリオをいくつか用意するだけで済まそうと思っていた。
 
ところが我々のクライアント企業の担当者は、「それでは不満、もっと二酸化炭素は高く
なるはず。この前どこかの教授は150ユーロ/トンになるかもしれないと言ってた、だから
もっと上げた数字を作れ」という。
 
要はこの担当者は社内で「排出権削減プロジェクト」をやってる人なので、とにかく自分が
頑張らなければ会社に大きなダメージが出ますよ、とアピールしたいわけだ。さすがに直近
価格の10倍はやりすぎじゃ・・と言ってみるのだが、「いやいや将来の規制は超厳しくなる
からそんなもんじゃないって」と言って聞かず。
 
この人の気持ちも分からないことはなくて、要はこの排出権価格をベースに考えると、排出
削減をする為の投資などできなくなってしまうのである。そもそも投資をする以上、何らか
の固定資産を抱えることは避けられない一方、投資をしないことで食らうかもしれない変動
費が大したことなければ、社長としては投資に及び腰になる。よって、地球は救われない。
 
一方、「規制が超厳しくなるから価格も超高くなる」というロジックは真実そうに見えて
多分間違いで、なんでかというと、
 
・排出権というのは、そもそもみんなが規制(とそれによって生まれるペナルティ)を
 現実的なものとして恐れるから成立する。
・「こんなのやってらんねーよ」と思うほど規制が厳しすぎると、みんな規制のない国
 に逃げてしまう。政府もこれを分かってるから、みんなが逃げない程度の、いい感じ
 の規制にせざるを得ない。
・仮に全世界を囲い込んで超厳しい規制を作っても(多分政治的に無理だが)、誰もが
 「これ無理じゃね?」と思いだすと、公然と守らない人が出てくる。そうすると排出権
 の意義が喪失して、価格が暴落する。
 
という感じ。あってるかどうかは現実が決めることだが。

例えば日本みたいに、明らかに京都議定書の目標を守れなそうな国が、仮に「えーもう
勘弁してよ、無理無理」とかひとたび言ってしまうと、排出権マーケットは完全に崩壊
するだろう。日本政府がどうするつもりなのかよく知らないけど。京都の名にかけて何とか
するんだろうか。日本がギリギリでがんばるのであれば、やっぱ排出権は買いかも。
 
 
そんなこんなで、こっちの思いに拘るか、客の要望におもねるか、という典型的コンサル
ジレンマを(軽ーい形で)経験できている。まあこれも経験値。もうちょっとがんばりたい。

 
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無題
2010年04月16日金

興味本位の質問ですが、ペナルティってどうなっているの?あと、そのペナルティってどういう風に執行されるんですか?

  • フェナーズ 3.9
  • 編集

無題
2010年04月16日金

どうもどうも。

EU-ETSの場合、Phase II (2008-2012)では削減義務違反の場合100ユーロ/トンの罰金という規定になってます。執行は加盟国の国内法によるね。

一方京都議定書の場合、詳細を決めたマラケシュ合意でもこういう罰金的なペナルティは規定されてなくて、あるのは①削減できなかったら次は1.3倍の削減量を義務付けられる ②次からどうすんのかWay forwardを提出させられる ③排出権取引の参加資格停止 というのが書いてあるのみ。これを地域規定に落としこんだのがEU ETSであり、EUの国はこれを国内法にまで落としこんでいる。

日本は国内法整備ができてない(東京都など、地域レベルではいくつか進んでるけど)ので罰則も何も。。という感じかな。

無題
2010年04月16日金

どうも。そうなると、特に京都議定書って参加者に完全に無視されるとどうしようもないって感じな訳ですな。国際的な枠組みで、規制の実効性を担保するのは難しいだろうなとは思っておりましたが、ザルですよね。

  • フェナーズ 3.9
  • 編集

無題
2010年04月17日土

仰る通り、国際的な枠組みと言ってもどこまで拘束力があるかというと難しいよね。外交的なインパクトをどこまで気にするかだけど。

その上、結局2013年以降の体制が固められてない以上、「まあ、もうあれはなかったことにしようぜ」と誰かが言いだすリスクは十分あると思います。残念ながら。

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