11.23.19:36 [PR] |
02.10.06:13 授業の記録:「プライベートエクイティ」 |
今とっている授業の中に、プライベートエクイティ(PE)の講座がある。
実際のPEの現役パートナーが来て教鞭をとっている実践的な内容だけに、17時から
20時半といういやなスケジュールにも関わらず、教室は毎回超満員。
講義を聞いていると、PEの投資のプロセスは極めて商社でやってたことと近い(少なく
とも投資実行までは)ことがわかる。投資先候補のバリュエーション、投資実行に至る
までの諸々の契約ネゴ、デューデリジェンス、オランダにSPCを立てることで節税する
とこまで、目新しい内容は特に無い。
だけど違う。なんか、緊張感がある。
考えたが、自分の今までの仕事と決定的に違うのは、
①PEと、PEに金をつっこんでいる投資家との距離感がすごく近いこと
②だからPEは、いつも投資家のことを気にしていて、いつExitするか、どうやったら高値
で売って投資家に還元できるかを常に考えていること
だと思った。
この点、商社みたいな大企業にいると、株主のことなんてあまり気にしないし、投資先
を5年で育てて早く売って資本を有効に使おう、なんて本気で考えたことはなかった
(一応、投資リターンの計算とかはするのだけど、自分の心に響く数字ではなかった)。
むしろ目の前にいるお客さんのことを日々考え、自分たちが満足いく仕事をすることに
ベクトルが向いていたと思う。
別に、会社とは誰のものか?なんて議論をする気はない。お客さんも従業員ももちろん
大事。ただ、お客さんに気を使うように、自分たちに投資されている金にももっともっと
敬意を払うべきではないか、と思っただけ。
株主への奉仕なんてしょせん欧米人の発想さ、みたいな偏見もあったが、ちょっと
浅はかすぎたと反省。そんな甘っちょろいもんじゃないぞ、とPEのオッサンに言われて
いる気がした。
ちなみに、投資先からExitする時、一番おいしいのはIPOさせることではなく、「Strategic
Buyer」に売ること、すなわち、投資先のビジネスに戦略的意義を感じてくれるような、同業
他社に売ることだという。そういう相手は、投資先とのシナジーとかマーケットシェアとか、
金額で評価しづらいものにも喜んで金を出してくれるため、IPOなんてせちがらい現場より
よっぽど高く売れるとのこと。
なんか、こう聞いていると、むしろ商社みたいな会社はPEのカモにもなりかねないな、
とも思った。気をつけよう。
02.06.05:05 年度末はコンサルタント |
MBAプログラムの一環で3月中旬~4月中旬の間、まるまる1カ月を企業向けコンサルティ
ングにあてる。
コンサルプロジェクトは11月~12月にも既にやっているが、この時はあくまで授業が終わ
ったあとの夕方&週末を使ってやるもの、かつクライアントもごくごく小規模企業だったが、
今回は授業も全てつぶし、クライアントは誰もが知ってる一流企業、しかもイギリス外での
活動も含むということで、ケンブリッジMBAの一番の山場になる。
プロジェクトのクライアントは学校が用意するもの、学生が独自にもってるものそれぞれで、
だいたい4-5人のチームでどこかのプロジェクトにアサインされることになる。
まあ、10カ月しかないMBAプログラムのうちまる1カ月をかけるということで、履歴書にも
ばっちり書けてしまうし、学生のプロジェクト選びは相当真剣。早く動き出す人は11月くら
いから自分の興味のあるクライアントにコンタクトを開始、同時にチームメンバーも募った
りするので、時に学生の中で政治的な動きも見えたりする。
自分はそこまで必死に動いていたわけではないが、親しい仲間うちでクライアントを連れて
くることに成功。ただし客にとって必ずしも自分が必要とされてるかというとそうでもなく、
興味のある同級生とともに履歴書を提出し、チームメンバーは客の好みで決めるという
容赦ないシステム。結果、運よく客の好みに合致したのか、3月からはこのクライアント
のもとで環境関連のプロジェクトを担当することになった。
環境・新エネルギーは目下、MBAで最もホットトピックで、わざわざこのための授業まで
開講されているくらい(ただ、強調されすぎで学生の間ではやや食傷ぎみ・・・)。自分は
むしろ化石燃料がバックグラウンドで、やれ二酸化炭素だピークオイルだと叩かれる側
ではあるが、エネルギーの世界の現実感を知ってる人間は少ないし、また一方で、今回
色々勉強して、いまだグズグズな新エネ的なものを、まっとうな商売に仕上げていくのも
将来の自分の使命だと思う。
そういえば今回のチームメンバーの3人はなんとたまたま全員英語ネイティブ、しかも
うち2人はいまだに何言ってるかよくわかんないイギリス人。。。もう1人のカナダ人は、
「心配するな、オレもあいつらが何言ってるか分かんないから」という。若干先が思い
やられるが、やむなし。腹をくくって乗り切ろうと思う。玉砕あるのみ。
02.03.07:20 Google中国 |
今学期はMBAっぽい授業がだいぶ増え、今日もGoogleの戦略についての議論などをしている。
Ten Golden Ruleと呼ばれるGoogleの社是には、"Don't be evil"、邪悪なことをするなという
メッセージがある。このメッセージは実務上、例えば、広告主からお金をもらって検索結果の
ランキングを操作することなどはしないという方針につながっている。他の一部検索サイトでは
このような操作を行っているところもあり、より高い広告収入を得ているのだが、Googleはこの
逆を行って、検索結果にバイアスをかけないことによってユーザーの信頼を得、シェアを伸ばし
てきたわけである。
だからといって検索結果を操作しているサイトのシェアが必ずしも低いかというとそうでもなくて、
代表的なのは中国No.1サイトの百度である。このことを授業中に指摘したところ、中国人の
声も聞きたいという意見が出て、中国本土出身でマイクロソフトで働いていたクラスメートが
発言することになった。
中国といえば目下、Googleがサイバー攻撃と検閲を理由に撤退を示唆していて、同級生の間
でも関心が高い。GoogleはDon't be evilという信念を貫いたのだ、と支持する声が多い中、
中国人同級生はなんだか発言にしくい感じにもなっている。
うーん、へんな風にけしかけてしまったかなあと反省しつつ聞いたのだが、クラスメート曰く、
検閲されてみんなハッピーなわけはないけど、中国は複雑&巨大なマーケットで、検閲を気に
しない人も多いし、そもそも何がevilかなんて、横から出てきて断言はできないよね、という
コメント。いやー、あの雰囲気の中でこの発言は立派。T君サンクス。
授業後も、イギリス人同級生が「中国人は検閲されることに社会的コンセンサスがあるのか?」
と追加質問してきたので一緒に聞いていたが、いやいや待て待てシンガポールだって報道は
されないけど実は大々的に検閲してるよね、そういえば中東だってそうじゃんという話になり
(ちなみに中東では最もリベラルなはずのUAEでも、例えばmixiは見れません)、少なくとも、
自由じゃない=evil、なんて決めつけをするのはちょっと傲慢な気はした。
そもそも中国の話で言えば、Googleは結局マーケットシェアの2割しか握れておらず、7割
近くは百度ユーザーである(ちなみに韓国も地元の検索エンジンnaverがぶっちぎり)。
他の中国人同級生に聞くと、要は百度の方が圧倒的に中国語検索がしやすく、さらにMP3
検索という、はやりの音楽を検索してその場で聞けてしまうサービスがあり、よってわざわざ
Googleを選ぶのは、百度では検索できない情報があるのを知っている一部の人だけだという。
もともと百度はGoogleのマネをして後追いで市場に入ったのだが、マーケットのニーズを
しっかりつかんで(中国では映画・音楽などエンタメの為にネットを使うユーザが大多数
だという)のしあがってきたわけである。
そうなると、欧米的価値観の世界では、「あのGoogleが撤退する?やっぱ相当邪悪だな、
中国。」みたいに思われがちだが、要は競争に負けたイチ業者が撤退するのみとも言える。
考えすぎかもしれないが、撤退にあたってカッコがつく理由を探していただけかもしれない。
もうひとつ言えば、Google中国撤退の話題では、結局こういう政治的な見解しか出てこず、
「あの会社の撤退は中国のネット市場の将来にどんな影響があるのか、ユーザーがくっきり
別れてたのだとしたら、もしかしたら市場が縮小しちゃうんじゃないだろうか、それとも誰かが
穴を埋めていくのか」等のビジネス的視点が欠けているのが残念なところ。むしろMBAでは
こういう話をしたいわけで、ここは中国人同級生とこれから数人で話そうと思う。
日本にいると政治的な要素もあって遠く感じてしまう中国だが、ここにいると相当身近。だか
らって打倒欧米みたいな狭い考え方になっちゃいかんのだが、少なくとも偏見や思いこみは
捨てて分かりあっていきたいと思う。
01.22.08:57 ややしんど |
毎週エッセイを提出する授業を選択したためで、自分で選んだのでしょうがないのだが。
この上、よせばいいのにカレッジのイベント担当を引き受けてしまい(これは今度また詳しく書きます)、これも想定以上に時間がかかり、JALとかハイチとか色々あるのにあまりニュースも見れていないのが無念。
とはいえ、授業も前学期より実りのあるものが多く、カレッジはカレッジで、800年大学をやっているケンブリッジならではの伝統を感じる部分も多く、勉強にはなっている。
そういえばその選択した授業で、投資銀行の歴史について学んだ。全く知らなかったのだが、いわゆる投資銀行は元々は19世紀に大西洋で貿易をしていた商人たちが源流らしい。彼らは取引をする中で貿易金融、保険などのファイナンス技術に長け、産業が発展して大資本が必要になるのにあわせ企業向けファイナンスに以降していき、海底横断ケーブルや長距離鉄道などの巨大ディールをまとめていったという。
よってイギリスの伝統的な投資銀行は「商人」からとって「マーチャントバンク」と呼ばれていたのだが、そう考えると要はもとは日本の商社の形態に近かったわけで、逆になぜ日本と違って貿易部分が切り離されていったのかなど興味深い。
そのマーチャントバンク達も、80年代のイギリス金融ビッグバンで既存の特権が自由化されてしまい、容赦なくアメリカの投資銀行に吸収されていくのだが、最後までなんとか残っていた組の
代表格がベアリング証券である。
このベアリング証券も、最後はニックリーソンというトレーダーの巨額の損失隠しでつぶれるわけだが、自分もトレーダーのはしくれとして、このおっさんがなぜ負けまくったのか、なぜ隠そうとしたのか、最後にどこで「ああもうあかん」と諦めて海外逃亡したのかは興味深い。
昔本で読んだ限りでは、たしか日本株を基本的にロングしていて、阪神大震災で相場が下がって大打撃を受けた後、今度は同じ日本株オプションのショートストラドル(こんなの↓)で賭けに出た
のだが、やっぱりダメでした、というストーリーだったと記憶。最後にとったポジションは、相場が動かない場合に儲かるものなので、地震で相場が荒れる中でここにいくのはやや根性ありすぎ、というか危なすぎなのだが、察するに手元流動性が全然なくて、とりあえず手前で金がほしかったのだろう。ただ、これでは死ぬ前の時間稼ぎにしかなってないが。。。
なんだかなあと思うが、この世界では損失隠しはままある話で、自分だったらどうするか、自分が上司の立場だったらどうコントロールするかなど、リアルに考えていきたいと思う。<
01.16.07:35 ナイジェリアン青年実業家と呑む |
学校主催のイベントで、ナイジェリアで最近イケてる実業家の話を聞く。
ナイジェリア出身、イギリスで幼少期を過ごし、アメリカの超有名校に通い、25歳でナイジェリアに戻り、家業から始めて、欧米資本のナイジェリア現地店を買収しまくってのしあがってきたという。御年41歳。顔は相当イカツい。
現在発電、Oil & Gas、建設などを展開し、まだまだ広げるぜという。今のナイジェリアの国際的立ち位置からすると、言いすぎかもしれないが日本なら渋沢栄一みたいなもんだろうか。
スピーチは極めてシャープかつ論理的で、その分きっと嫌う人も多いだろうなというような印象。Green発電のアフリカでの可能性について質問した学生を、「Greenっていうか、そりゃその方がいいんだろうけど、その前に電気まだ通ってないんだから見る視点違うよね」と切って捨てていた。これは正しいと思う(ちなみに同氏曰く、ナイジェリア全体での発電量はいまだ最大3,000MWだという。これは、東京電力1社での64,000MWと比較すると、規模が違いすぎる。Greenにするといってもインパクトはほぼ無いだろう。)
その後、学校・同級生と一緒に運よく同氏と食事をする機会があったので、ここでもけっこう真剣に話を聞いた。個人的には最近アフリカはかなりアツい。嬉しいことに日本の商社のことまで知っているようだったが、名前が最初に出てきたのが同業他社だったのは無念。。。
以下、スピーチ・夕食で印象に残った言葉。
・アフリカに来る会社は多い。でも世界はアフリカとビジネスする覚悟が本当にあるか?
・ナイジェリアで商売するには政治とのコネが必要と思うのは誤解。アフリカは変化してきている。
・ナイジェリアの石油ガス産業は過去からのしがらみによる非効率な部分多い。これは(自分が)
変えなければならない。
・商売がしたければ偏見なく自分の目で情勢を見るべし。