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12.01.23:10 イギリス的社会における組織運営2. 「平等」 |
イギリス大企業での発見その2は、「平等はタダでは実現できない、でも何よりも重要」ということ。
いまどき、差別はいいことだなんていう人は誰もいないだろう。人種、性別、宗教、なんでもいい。そう、差別は悪だ。我々は平等でなければならない。
では、ことビジネスにおいて、なぜ平等が重要なのか?それは被差別集団のやる気を決定的に下げるからだ。グローバル企業において、これは特に重要だ。グローバル企業では従業員のバックグラウンドは多種多様で、そして一見しただけでは分かりにくい。でも本人たちがそこにアイデンティティを感じている以上、差別の顕在化は従業員によるストライキ、訴訟、一斉退職を容易に引き起こす。
イギリスのEquality Act("平等法")におけるDiscriminationの定義は大きく二つ。
1. Direct Discrimination - 直接的差別
A person (A) discriminates against another (B) if, because of a protected characteristic, A treats B less favourably than A treats or would treat others.
弊訳:ある人Aがある人Bを、Bの保護されるべき性質(年齢、障害、既婚/独身、人種、宗教/信条、性別、性的志向)のために他の人より冷遇した場合、これは差別である。
2. Indirect Discrimination - 間接的差別
A person (A) discriminates against another (B) if A applies to B a provision, criterion or practice which is discriminatory in relation to a relevant protected characteristic of B's.
弊訳:ある人Aがある人Bに対し、Bの保護されるべき性質に関連する差別的な条件、基準、慣行を適用した場合、これは差別である。
1.は分かりやすいと思う。要は、黒人だから部長になれない、とか、イスラム教だから採用しない、とかはダメです、ということ。
2.はちょっと分かりにくい。もっと詳しい解説をググると、長いけど、
"Indirect discrimination occurs where the effect of certain requirements, conditions or practices imposed by an employer or education provider has an adverse impact disproportionately on one group or other. Indirect discrimination generally occurs when a rule or condition, which is applied equally to everyone, can be met by a considerably smaller proportion of people from a particular group, the rule is to their disadvantage, and it cannot be justified on other grounds."
弊訳:間接的差別は、雇用主や教育者によって課される要求、条件、慣行が、特定の集団だけにとって不利な効果をもたらす時に起きる。一般的には、全員に適用される社内ルールや条件が、グループの一部の人にしか守れない場合、守ると不利になる人がいる場合、またはその他の理由で正当化できない場合が間接的差別である。
要は、「お前はイスラム教徒だからクビだ」とか言われないまでも、「お祈りを行うべき時間に毎日営業会議がある」とか「社員食堂でトンカツ以外の選択肢がない」とかはダメだということ。
さて、これらを厳格に守るイギリスの大企業で何が起きるかというと、1.の直接的差別に関しては言うまでもなく、この点に関する教育は入社時にまる半日かけて行われ(俺のような短期労働者でも受ける)、その後も厳重にチェックされる。
カルチャーショックだったのは2.の間接的差別に関してで、例えば5時半以降は原則、正式な会議は禁止。なぜかというと、出席できない人がいるから。その時間だと、子供を持つ親や、病気、宗教などで当然出られない人がいる。その人達の権利を守るためには、みんなそっちに合わせなさいというのが会社のメッセージだ。
これは日本的な「気合いでがんばる」「長時間働く人が偉い」みたいな文化からすると相当チャレンジだ。個人的に、こういう文化自体が大嫌いだが、意外と「日本人の勤勉さが日本の競争力の源泉」みたいな論説は多く(俺はこういうろくに分析もできてないでロマンスに逃げる論説も嫌いだ)、これをやるとなると、弱者に合わせるなんて組織として退化じゃないか、とかいう人も必ずいるだろう。
だが、要は平等とは、かっこいいお題目ではなく、コストをかけて行うべき施策なのであり、そこでは今までのマインドセットの変化が必要だということだ。グローバル企業になるならば、「一億総火の玉」みたいな根性論ではなく、組織の多様性とそこから生まれるアイディア、リスクヘッジなどをとるべきだ。
そもそも日本企業の場合は、1.の直接的差別すら排除できていない。日本採用組と海外採用組の待遇に圧倒的な差がある、とか、日本人で会議やる時に非日本人を呼ばない、とかもう最低である。今から一つずつ直していかねばならないが、その前にどこかで訴訟でも起きるんじゃないか、と心配でならない。やられたら変わるのかもしれないけど。
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