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ロンドンで働いてみた

Cambridge MBAを2010年夏に終了後、そのままロンドンで仕事してみています。 ここでの体験を日本で役立てられるよう、日々勉強しています。
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11.21.18:18

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  • 11/21/18:18

06.11.07:51

最後の授業と季節の変化

またご無沙汰してしまった。気がつくと前回書いてから10日も経つ。
最近は、書きたいことも、なんか自分の意見を書くべきニュースも色々あるのだが。

MBAが始まって以来、ちょこちょこ種をまいていたことが、先週、今週くらいで一気に全部
開花してきている。結果、嬉しいことなんだが。もうちょっとタイミングをずらして咲かす
べく調整すべきだったなと反省。

 

ケンブリッジでは季節が変わり始めている。そもそもイギリスに来てから、イメージよりは
随分雨が降らなかったし、ここ最近も意識したことはなかったが、今週は毎日パラついている。

といってもイギリスの雨は日本とは違い、1日に1時間も降ればすぐ止んでしまう。だからこそ
傘もレインコートも持ってなかったりするので、突然の雨に対する態度は基本的には「我慢」
だけ。だいたい毎日濡れて帰ってきている。


今週はケンブリッジ大学全体が試験シーズンなので、街は基本的に静かだ。この雰囲気も明日
までで終わり、その後はMay Week(6月だけど)と呼ばれる各カレッジのMay Ballの1週間に
入る。

それが終わったら、もう夏。多くの学生が故郷に帰って行く。


MBAも同様で、ついに今日、最後の授業が終わった。最後受けたのは「Macro Policy Issues
in the Wake of the Global Crisis」というやたら長いタイトルの授業。一昨年の金融危機
以降の世界の対応を、新古典派経済的な政策の失敗ととらえてみんなで議論しようという内容
で、非常にトピカルで勉強になるのだが、講師の喋りが緩慢なのもあってあまり評判はよく
なかった。

個人的には、日本で慣れてるからか、別にプレゼンが下手な先生がいてもいいじゃんと思い、
きっちり出席していたのだが、結局最終回には6人しか出てこないというやや寂しい幕切れと
なった。その分濃い話ができたようにも思うので結果オーライ。がんばれ先生。


もう一つ今週受けていたのは「Entrepreneurship Venture Capital」という、スタンフォード
から来ている教授が開くベンチャーキャピタルの講座。先生の話し方で言えば、こちらも御年
60歳といった恰好の、聞き取りにくい英語の先生なのだが、「Macro・・・」の教授には申し訳
ないくらいこちらは毎回満員の授業。たしかに出てくるケーススタディだけ見ても、本当に
リアルな人間模様といった感じで、素直に面白い。

自分がベンチャーキャピタリストになることは多分なく、どうせやるなら自分で会社やってから
だと思うのだが、経営者の目線で考えた時にも非常に参考になるケースが多く、充実していた。


こんな風に授業に充実したものを感じるのも、もしかしたら「これで最後」的おまけが乗っかって
いるのかもしれないが、いやほんと、実質10か月のプログラムは本当に短いなあと思う。



さて、ちょっと休憩できたので、ここらで戻って、咲いちゃった花をどうするか考えねばならない。
次はもっと早めに書きます。


そういや明日からワールドカップ。
やなニュースも色々あるが、やっぱ祭りの前の雰囲気は格別。

 

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05.21.06:52

大人の自由研究:私とゴミ

今日も天気がいい。ほとんど夏だ。今年の夏はイギリスとしては超異例の最高気温
35度が予想されているが、この調子だと本当にそうなりそうだ。家庭にエアコンの
ないこの国では非常につらい。

こういう快晴の日だと、前もあったけど、やっぱり公園が汚れる。さんざん騒いだ後、
もう余裕でペットボトルとかマックの袋とか芝生の上に置いていってしまう。

目の前にいたら日本語でめさめさ文句言ってやろうとか秘かに思ってるのだが、幸か
不幸かなかなか置き去り現場には出くわさない。



別にだからというわけではないのだけど、学校のサマーアクティビティ、すなわち
夏の自由研究は、ゴミ処理業界に関して調査をすることにした。

今年からケンブリッジMBAでは、サマーアクティビティの自由度が格段に上がった。
従来からの卒論に加え、

①Individual Projectと呼ばれる、自分一人だけでの企業相手のプロジェクトを行う、
②インターンを単位としてカウントする、
③語学やその他特別授業に出席することで単位とする、

など様々な道が開かれた。特に②や③を選択すると、かなり早めに職場復帰が
可能になるので、私費学生にとってのメリットは大きいと思う。

自分の場合はここでいう①にあたり、Environment Agencyという、日本で言う
環境省みたいなイメージのお役所とのプロジェクトとして、イギリスのゴミ処理
業界の調査にあたることになった。

夏どうしようかなと思っていたところ、こんな話があったので、何か運命的なもの
というか、もう、乗りかかった船だし、とか思ってつい踏み出してしまった。別に
勝手に盛り上がってただけで乗りかかってはなかったのだけど。


ゴミ処理というのは環境問題的には重要な分野だと思うのだが、意外と今まで
焦点があたってこなかったらしく、今日はじめて面談した役所の担当者も、
正直あんまり業界構造とか見えてないんだよねという。

また、まともにデータをとっている調査会社やコンサル等もなく、過去資料も
あまり無いらしい。

よって調査の方向もまだはっきりと決まってないのだが、例えば君がこの業界
で儲けてくとしたら、という視点で好きにやってくれたまえという。そうやって
ビジネスをする人間が考えることを吸収した上で、将来の規制に生かしたい、
とのこと。


なんだかモルモットみたいな気分ではあるが、MBAの最後の締めとしては
非常にいい感じのプロジェクトになりそうだ。願わくば何かの商売につながる
ようなヒントくらいは見つけたい。

もう一つ言えば、やはり商社の人間として役所と仕事をするのは基本中の
基本だし、ここで何か関係ができるように頑張るんだろうなと思う。2010年夏、
ゴミに埋もれます。


04.17.16:11

Global Consulting Projectまとめ

昨日のプレゼンをもってついに1カ月にわたるGlobal Consulting Project(GCP)は
終了した。このプロジェクトはCambridge MBAのプログラムのメインでもあり、
興味のある方にとっては重要な点と思われるので以下簡単に総括。
 
 
1.総括
極めて濃い内容になった。満足いく結果になったのは主に以下の2~4がポイント。
 
 
2.チーム
前にも書いたが、まずチームメンバーに恵まれた。チームで重要なのはお互いの意見を
尊重する空気があるかどうかであり、一度プロジェクトの方向性で煮詰まった時、
俺が思い切って(自分の好きな方向に・・)誘導したのだが、よくありがちな、誰かが
チャチャを入れてるうちにワヤワヤになって結論が出ず、やむなく既存の方針で走る、
みたいなことにならず、他のメンバーがむしろ積極的に提案を後押し、補足してくれた。
 
この点は非常に難しく、対立が絶えないのもダメだが、お互いを「尊重」しすぎるチーム
だと、まともな意見交換をほとんどしないまま、個人の仕事の寄せ集めで終了してしまう
こともある。チームメンバーの性格、議論のためのスケジュールの共有などの点で、
正直ラッキーで、運命に感謝するしかない。
 
 
3.中身
GCPに何を期待するか、というのは人によってかなり異なると思う。
 
 ①興味のある分野で、自分が本当にやりたいことを極める
 ②色んな企業の人とかにインタビューして話をすることで学ぶ
 ③イギリス外、特に行ったことのない(これからも行きそうのない)国に行く
 
そしてこの3つは大概、全て達成するのは難しい。
 
俺のチームの場合、基本的な活動は図書館にこもってリサーチ、という感じだったので、
②も③もほとんど無し。③に関しては、海外協力系NGO出身が2人もいたりと、そもそも
「アフリカとか中東とか、もう色んな国行き尽くした」メンバーが多く、基本的に
みんな不満ゼロ。

②に関しては当初不満のあったメンバーもいたが、リサーチが進むにつれて、あまりに
この分野を知らなかったことに気づき、これはこれだけでも十分勉強になるな、ということ
で意見が一致。
 
むしろ、①にエネルギーを集約できたのが、全般にレベルの高い議論ができた一因だった
と思う。特に、新エネといえば太陽光発電業界、電気自動車業界とか色々あるが、その
前に「二酸化炭素業界」=各国政府と、その周りでうごめく(やや怪しげな)コンサル、
研究機関、投機家達というのが存在するんだなというのは大きな発見だった。
 
 
4.クライアントとの関係
うちのチームは他プロジェクトと違い、まずは大手コンサルが我々から見た客なのだが
そのコンサルが紹介する更に別の客に対して提案を行うというスタイルだった為、事実上
大手コンサルが我々のアドバイザーのように機能してくれた。よって、本当の客と、
アホな学生の狭間でゆれるコンサル担当者の苦悩をつぶさに見ることができた。
 
「プレゼンの構成が甘い」「提案が浅い」などのプロフェッショナルなコンサル指導と「いや
そういう言い方だと怒られちゃうから」「もうちょっと相手を立てるべく、グラフの見せ方を
変えろ」などのプロフェッショナルなサラリーマン指導は、非常に勉強になった。
 
一方、このコンサルから見れば、アホな学生が勉強したいって言ってるんです、といって
なし崩し的に客の情報を色々手に入れられたことは有益だったようだ。また、ついてくれて
いた担当者数名は、学生の世話係です、ということで客との関係、次の仕事への足掛かり
も作れたという。プロジェクト終了後に、「お前ら、グッジョブ」とほめられた。
 
 
5.その他
4.の最後とつながるが、この手のプロジェクトで通常クライアントが何を求めるかと
いうと、以下2点。
 
 ①使える学生をリクルーティングする機会
 ②学生(まあ、既にオッサンばかりだが)ならではのフレッシュな意見
 
特に、ベンチャー企業が相手であったCVPと違い、GCPの場合は①に尽きると思う。
 
クライアントは大手企業が中心であり、別に学生が提案する内容など本気で相手にして
いない。ただ、そこで光るものがある人間はそのまま会社で使ってもいいと思っている
わけである。
 
将来、自分の会社でケンブリッジと組んでGCPみたいなことを是非やってみたいと思う
が、その為には海外のMBA学生をさくっと採って本社で抜擢できるような土壌が必要
である。ここは日本企業にとって現状大きなハードル。ただ、海外により深く刺さって
いくには優秀な現地人を採ることが至上命題であり、何とかしないといけない。
がんばります。
 
 
 

04.14.08:17

よりマニアックな二酸化炭素と私

Global Consulting Projectも終盤を迎え、今までの調査や作った経済性モデルの総
仕上げをしている。今日はかなりマニアックな内容になるが、今後の新エネルギーとか
を考える上では重要な点なのでおさらい。
 
 
 
今回作った経済性モデルは、将来の二酸化炭素排出規制によって企業にどの程度の
コストインパクトがあるか、というもの。ここでコスト計算に一番きいてくるのは、当然ながら、
二酸化炭素排出権の価格が将来いくらくらいになっているかという点。価格が安ければ、
例え排出削減などできなくても権利を買ってくればいいじゃんだし、高ければ、外で買え
ないかもしれないから一生懸命(投資もして)排出削減しなきゃというロジックになる。
 
 
実はいま取引されている排出権にも色々あって、上場してマーケットで取引されてるもの
だけでも
 
(1) 国際的枠組みによるもの  と
(2) 国内の枠組み、もしくは企業間の自主規制によるもの
 
とがあり、(1)の代表格は①京都議定書がベースになっている「CER」、②欧州連合域内
排出量取引制度
(略称:EU-ETS)がベースになってる「EUA」であり、(2)の代表格は(いま
だ国際的枠組みには入っていない)アメリカ、シカゴで取引されている「CFI」「RGGI」など。
 
アメリカは京都議定書に入ってないから何にもしてないかというとそんなことはなくて、
州レベルの規制は進んでいて(ただし全くやってない州もある)、そういう州では(1)の国際
的枠組みと同じくキャップアンドトレード(排出削減をして余った分の権利は売っていいです
よという仕組み)をベースにした取引が(2)でなされている。 
 
で、今までの価格トレンドを見ると、例えば国際的枠組みであるEU-ETSをベースにした
EUAでも、2005年の取引開始以来、2006年と2008年に34ユーロ/トンをヒットして以降は
下がり続け(画像。見づらいですが。。)、直近では13ユーロ/トン近辺。

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(2)だと状況はもっと寒く、過去に10ドル/トン以上になったことはほぼ無い。

(2)の中で個人的に注目している銘柄で、「アメリカの連邦レベル規制が成立した暁には、
その時に使える排出権を渡す(よって規制が成立するかどうかのニュースに敏感に反応
する)」という商品(CFI-US)もあるが、これとて直近価格は8ドル/トン。


 
排出権価格がいまいち盛り上がらない理由は色々あるのだが、直近ではやはり、景気が悪く
なってエネルギー消費量が自然に減り、頑張らなくても二酸化炭素排出が減ってしまった、
ということ。例えばEUの排出削減目標は2020年までに1990年比でマイナス20%なのだが、
今の段階で(ほとんど努力せずに)既にマイナス10%達成できてしまったという。よって排出
権は完全に余っている。しかも余剰の排出権はとっておけばあとで使えるので、将来の価格
をも押し下げる。 
 
 
 
で、こういう状況で二酸化炭素価格をいくらで見積もりましょうか、という話になるのだが、
当然ながら我々としてはある程度低めに見ざるを得ない。まあたしかに超長期で見れば何が
起きるか分からんが、多少違うシナリオをいくつか用意するだけで済まそうと思っていた。
 
ところが我々のクライアント企業の担当者は、「それでは不満、もっと二酸化炭素は高く
なるはず。この前どこかの教授は150ユーロ/トンになるかもしれないと言ってた、だから
もっと上げた数字を作れ」という。
 
要はこの担当者は社内で「排出権削減プロジェクト」をやってる人なので、とにかく自分が
頑張らなければ会社に大きなダメージが出ますよ、とアピールしたいわけだ。さすがに直近
価格の10倍はやりすぎじゃ・・と言ってみるのだが、「いやいや将来の規制は超厳しくなる
からそんなもんじゃないって」と言って聞かず。
 
この人の気持ちも分からないことはなくて、要はこの排出権価格をベースに考えると、排出
削減をする為の投資などできなくなってしまうのである。そもそも投資をする以上、何らか
の固定資産を抱えることは避けられない一方、投資をしないことで食らうかもしれない変動
費が大したことなければ、社長としては投資に及び腰になる。よって、地球は救われない。
 
一方、「規制が超厳しくなるから価格も超高くなる」というロジックは真実そうに見えて
多分間違いで、なんでかというと、
 
・排出権というのは、そもそもみんなが規制(とそれによって生まれるペナルティ)を
 現実的なものとして恐れるから成立する。
・「こんなのやってらんねーよ」と思うほど規制が厳しすぎると、みんな規制のない国
 に逃げてしまう。政府もこれを分かってるから、みんなが逃げない程度の、いい感じ
 の規制にせざるを得ない。
・仮に全世界を囲い込んで超厳しい規制を作っても(多分政治的に無理だが)、誰もが
 「これ無理じゃね?」と思いだすと、公然と守らない人が出てくる。そうすると排出権
 の意義が喪失して、価格が暴落する。
 
という感じ。あってるかどうかは現実が決めることだが。

例えば日本みたいに、明らかに京都議定書の目標を守れなそうな国が、仮に「えーもう
勘弁してよ、無理無理」とかひとたび言ってしまうと、排出権マーケットは完全に崩壊
するだろう。日本政府がどうするつもりなのかよく知らないけど。京都の名にかけて何とか
するんだろうか。日本がギリギリでがんばるのであれば、やっぱ排出権は買いかも。
 
 
そんなこんなで、こっちの思いに拘るか、客の要望におもねるか、という典型的コンサル
ジレンマを(軽ーい形で)経験できている。まあこれも経験値。もうちょっとがんばりたい。

 

04.09.09:14

新エネ、疑問、決意

いまやenvironment、clean tech、renewable energyはMBA用語の中でも最もよく
使われる部類の言葉であり、入学以来、これでもかという勢いで聞かされてきた。
 
学校でも関連のセミナーはじゃんじゃん開かれるし、"Climate leadership"なんて
授業まである。ケンブリッジMBAで今年から始まったconcentrationという専攻制度
の選択肢にも、"Finance"、"Entrepreneurship"等の定番と並んで、わざわざ
"Energy & Environment"が入っていたりと、学校側もこの分野には非常に意欲的
である。
 
もちろん学校以外でも、ここはヨーロッパ、その手の話題は尽きない。また、アメリカ
のMBAに行っている知り合いから聞いても、向こうでもエネルギー分野の位置づけ
はやはりかなり高いようだ。
 
俺の場合、学校でもEnergy SIG (Special Interest Group)という同級生の勉強会に
所属してて、また、今はGlobal Consulting Projectで環境関連のプロジェクトを
やってることもあり、同級生でも新エネ関連のキャリアに進みたいという人間の話を
よく聞く。彼ら同級生はなんとかそっちの仕事をつかむべく、セミナーにも積極的に
参加するし、人脈作り(こっちでは"networking"と呼ばれる)にも熱心だ。

これらは全て、大いに結構だし、俺も非常に興味のある分野なので、出来る限り
協力、貢献したいと思っている。
 
 
 
ただ、正直ひっかかるのは、
(1) まず第一に「なんでそんなに新エネルギーが好きなんだろう、既存エネルギーに
      は興味持ってくれないの?」ということと、
 
(2) 第二に、「お前ら本気でエネルギーに命かける気あるか?」
ということである。
 
 
(1)の点から言うと、MBAでそれなりにお勉強もできて、これから社会的にも相対的に
有利な立場に立てるであろう人間たちが、こぞって新エネ、というのは、まあいいんだ
けど、なんかもったいない。
 
話を聞いてると、「石油石炭はもう成熟産業、よりチャレンジするには新エネ」みたいな
ことを言われてしまうのだが、化石燃料は決して安定していない。むしろ超不安定、
課題山盛り。頭のいい人になんとかしてもらいたいことは沢山ある。中でも、これから
先、産油国のえらいさんとどう付き合うか、という問題は、弁の立つMBAが前線で頑張
れる分野だと思う。
 
ついでに言うと、先進国での雇用の意味では、新エネルギーは多分これから荒れる。

特に技術によっては、そもそも大したテクノロジーではなかったりして、陳腐化が
かなり早い。そのわりに、エネルギー供給の観点で安定的ではない、すなわち人間
生活の中での主要なパイを狙っていけない(例えば、太陽光が石炭火力に代わって
電源のベースロードになるのは無理)ものが多く、よってもって本質的に商売が拡大
しない。急激に人が入りすぎた業界では、これから廃業、統廃合、人切りが避けられ
ないだろう。
 
また、新エネ関連のエンジニアではなくビジネスサイド、例えばPEとかベンチャー
キャピタルみたいなのもあるが、このへんの将来性も怪しい。そもそも、この手の
ファイナンス屋さんは足が早く、かつ資本コストもお高くつく方たちなので、政府が
支援してやっと青息吐息、でもプロジェクトは20年走らなきゃいけない、みたいな
業界でどうやって生き残るつもりなのか謎。ケンブリッジにもこういうPEはいくつか
あるが、個人的にはかなりネガティブ。
 
 
さらに根源的に思うのは(2)の方なのだが、MBAで新エネとか環境やりたいという人達
の多くから、なんというか、覚悟が見えない。どうにも、なんか「ここを足掛かりに別の
分野へ転身」ということを考えてそうな気がするのだが、その意味では、ひとつのプロ
ジェクトの足が長いエネルギー分野は、多分典型的なMBAのキャリアとマッチしない。
 
まあ何が典型的なMBAか、というと、元々は投資銀行コンサル、もうちょっと最近だと
PE、ヘッジファンド、ベンチャーキャピタルあたりがポストMBAの仕事として最高だった
わけで、これらが相対化してきている今、MBAのキャリア感も変わってきていると言え
なくもない。

学校側も、過去の典型的な職場に学生をリードできないから, 新エネ的なものに流れて
いるのかもしれない。
 
とは言え、短期的な成功イメージを持っているとしたら痛い目に会うと思われるのが
この業界である。2,3年以内に履歴書に書けることはけっこう少ないだろう。どうもこの
へんの認識が薄い同級生が多い気がして、やや心配。
 
多分この分野を攻めるには、一生をかける覚悟が必要。例えば欧米的キャリアでも
最高位のひとつに位置する石油メジャーのCEO、役員レベルは、全て生え抜き社員。
多くの会社にいる、元コンサルです的な役員は皆無。しかもその内けっこうな割合が、
もともとエンジニアで現場感もバリバリだけど、ビジネスもみっちり叩きこんできた、
というタイプ。新エネは違う、なんてことはなくて、そもそもこういう人達と伍していか
なきゃいけないんだから、移り気でいいはずがない。
 
そしてそんな石油メジャーですら、これから生き残っていけるのかが分からないのが
化石燃料ワールドである。いまやエクソン、シェル、bp等に代表される国際石油会社
は、束になっても世界の石油の15%しか押さえていない。あとは地元のおじさん達、
産油国ががっちりガード。地元のおじさん達に価値を提供し続けられなければ、
さようならと切られてしまう世界だ。

ここでいう、提供できる価値がもしかしたら新エネなのかもしれない。このへんの新エネ
と産油国の関係はまた詳しく考えたいが、俺にとっては新エネは(少なくとも今出てる
ものは全て)その程度の位置づけ。
 
 
と、同級生の文句ばかり言ってきたが、俺はこの分野に命をかけられると思っている。
自分の能力を考えると、新エネで世界を変えることは無理だろうが、今の世界と今の生活
を守ることはできるはず。できる、というかなんとかする予定。
 
自分が死ぬのは多分2065年くらい。2064年までは働くつもり。それでもあと2万日弱。
それまでに何をなすべきか、考えさせてくれているという意味では、残り少ない学生生活
と同級生との会話に、本当に感謝しなければならないと思う。