12.04.02:27 [PR] |
03.17.05:28 ギリシア問題続き |
ケンブリッジに帰還。既にGlobal Consulting Projectの期間に入っているが、クライアント
とのキックオフミーティングが延期されてしまい、やや待ちぼうけをくらっている。
というわけで書こうと思っていたギリシア問題続きを。
個人的には、ギリシア問題の勘所は、そもそもヨーロッパを仕切っているのは誰なのか?
という点だと思っている。連日、この問題の報道を見ていると、ギリシアのパパンドレウ
首相が必死こいてネゴっているのは、ECBのトリシェ総裁ではない。また、EU欧州理事会
議長(前ベルギー首相、通称「EU大統領」)のファンロンパウや同欧州委員長のバローゾ
(ポルトガル首相)とでもない。
ネゴ相手はドイツのメルケルとフランスのサルコジの2人である。この2人は「大国」のボス
なだけであり、EUの重要ポジションに就いているわけではない。すなわち今回の危機は、
ユーロ圏みんなで力を合わせて作ったはずのECBやEUという組織は結局はリーダー
シップを持っておらず、要は喧嘩の強いボスに頼るしかないという事実を認識させてくれた
と思う。
(真ん中がEU大統領のおじさんだが、個人的には、この両親方の間でリーダー
シップを、と言われても無茶だと思う)
この大国2国がまたそれぞれの思惑で勝手に発言をするので難しいところである。
基本的な立場として、フランスは比較的ギリシアに優しい一方、ドイツは厳しく、財政
引き締めの完全な実施なくして援助などあり得ないというポジション。「なぜ67歳まで働く
ドイツ人が53歳で辞めるギリシア人公務員を助けなければいけないのか?」とのコメント
には、24時間戦える日本人的にはけっこう共感できてしまう。
よってもってギリシアも頑張るしかないのだが、ギリシアの痛いところは、現政権の支持
基盤が(どっかの国と同じで)労働組合だという点である。公務員のボーナスカットや
退職年齢引き上げ等々の引き締め策を打ち出したはいいものの、国中で大規模な
ストライキになってしまい、どうにもならない。国民の4分の1程度がストに参加したという
からこれは相当シビれる。ある公務員スト参加者はインタビューで「国がどんな努力を
してようと自分には関係ない。自分は犠牲者にはならない」と語っており、問題の根深さ
を感じさせる。
とそんな手詰まりなところで、ギリシアがワシントンのIMFまで出掛けて行って支援
要請をした動きは戦略的に素晴らしかったと思う。国際機関としてのIMFは性格上、
ギリシアに扉を閉ざせないが、これを見ればIMFの親玉としてのアメリカが、お前らもう
ちょっとしっかりやれよ、とヨーロッパに圧力をかけてくるのは間違いない。最終的に、
ドイツはわざわざ自らの口からEMF(IMFのヨーロッパ版)構想を切り出してアピール
せざるを得なかった。とはいえ、メルケル親方の発言ではなく、子分の財務相からの
コメントとしたあたりは抜け目なかったと思う(後で修正がきく)が。
そんなこんなで最近の新聞を見ているとまるで大河ドラマである。EMF構想は実現に
時間がかかるので、これで問題は収束しない。もっと直近ではまだまだ切った張ったが
続くだろう。自分個人に落ちてくる利害はウィーン旅行が安く済んだくらいしかないのだ
が、せっかく見だしたこのドラマ、最後までしっかり見ていたい。
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